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来た道を僕と弟は戻っていった。
弟は当たり前のように褒められ、愛され、
ますます幸福そうに頬を染めていた。
オマエサエイナケレバ・・
僕は道に落ちていた堅い棒状のものを拾って握りしめた。
それを握りしめると、怒りか悲しみかわからぬ震えが止まった。
弟が振り向いて僕を見た。
もう、止めることが出来なかった。
振り上げた凶器を、僕は弟の頭に渾身の力を込めて振り下ろした。
弟の顔が驚愕に変わる。
「にいさんっ!どうして・・?」
どうして?
どうして・・・?
嫉妬?・・・憎しみ?・・・怒り?それとも・・悲しみ・・?
僕にも腹の中の、この黒い龍のようにうごめく正体は解らない・・。
どうして?
どうしてなんだ・・?
僕も同じことを繰り返しながら、
何度も何度も弟の体に、重い凶器を打ちおろしていた。
僕は泣いていた。
大声で叫びながら泣いていた。
でも、まだ手が止まらない。
そして泣きながら笑っていた。
鮮やかな花のような赤が地面に飛び散り、吸い込まれてゆく。
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