獣王の城

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 ミアの貸してくれたドレスは、私の体にぴったり合っていた。しかもシルエットやデザインも素敵。可愛らしいフリルの付いたシンプルで品のあるロングドレス。  ミアめ、それなりに自信のあるやつを選んできたのね……。  ミアと目が合ったので、軽く微笑む。ミアはツンとして、そっぽを向いた。 「準備はできましたかな?」  背を向けたままで、ギュネスが言う。 「はい……」  私の返事に一呼吸置いて、ゆっくりとこちらを向くギュネス。 「うむ。お美しい。では」  そう言って、ギュネスは、派手な衣装のたもとから、短い杖のような物を取り出し、大広間の中央に歩み出た。そして、その場にしゃがみ込み、ゆっくりと移動しながら、床に杖で円形に線を描きはじめた。単純な魔法陣の様な気もするが、獣族に魔法を使える者はいないはず。  ギュネスの杖が描く線が、円を結ぶ。と同時に、眩いばかりの光が立ち昇り、それは天井まで届く光の柱となった。  ギュネスは光の柱から離れて跪き、ぼそぼそと何かを唱え始める。すると、光の柱の天井に接している部分が、更に眩く光り出した。  光り出した天井部分から、何やら物体がニュッと突き出てきた。それは、足の様な……、光り輝く足……。そのまま、ゆっくりと全身が現れる。その姿は伝承にあった神様そのもの。強烈に輝く光が全身から溢れ出し、辺り一面が物凄い勢いで輝いてゆく。  目の前の光景は、信じられないほどに神々しく、正に光の神の降臨……。あまりの眩しさに、その姿形はほとんど見ることができない。辛うじて人の形のシルエットでだと分かる程度。全身がキラキラと光り輝き、その背中には光の翼が広がっている。  こ……この方が、ウリア様……。魔の神様……。なんて、ど派手で、きらびやかな御姿……。  圧倒的なその眩しさは、私が想像していた神様の遥かに上をいく強烈さで、殆ど直視できない……。  強烈に光り輝くウリア様は、ゆっくりと下降しながら、静かに床に降り立った。 「光の使徒よ。アンジェリア・ロシュフォル王女を御連れしました」  床にひれ伏したままのギュネスが言う。  光の使徒? ウリア様じゃないの? ウリア様の使い? 使いだけど神様?? もはや、なんだか分からないけど、目の前のその方は、とにかく激しいほどに神々しい……。  その神々しい方が、スッと前方に手を差し伸べる。  その手は、私に向かって差し出されているような気がするけど……。  私は思わず左右を見回す。  ギュネスは、床にひれ伏したまま。ミアは、くしゃくしゃな顔で眩しそうに目を細めながら、ぽかんと口を開けている。  ギルバート王を見る。ギルバート王は、私と目が合うと、静かに頷いた。  ……やっぱり、私に行けっていうことなのですね……。  光栄な様な気もするけど、人知を超えた驚異の存在を前に、なんだか怖い気もする……。  かといって、この状態……。他に選択肢はない……。覚悟を決めて、ゆっくりと光の使徒の方に歩んで行く私。  恐る恐る、差し伸べられた手に向かって、手を伸ばす。  光の使徒の手に、私の手が触れた瞬間。ギュンと上方に引き上げられるような強い衝撃を受けて、意識が飛んだ……。
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