王女様が戻ってきた

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 私を乗せた馬車は、連れて来られた時と同じように、グングンと速度を増して進んでいく。荒地だろうが、崖だろうが、八本足の馬は平然と駆け抜けていく。  その馬を駆るのは、伝説とも言われてる、獣族最強の武人。獣将軍ベアクレス様。そして、荷台で私の前に座っているのは、獣族の頂点にして、獣族唯一の王。獣王ギルバート様。  小国の第三王女である私を城に連れて行く、ただそれだけの為に……、なんとも贅沢な護衛……。  今度は簀巻きにされることもなく、普通に扱われてるけど、森も渓谷も山脈も空を飛ぶように駆け抜けていく馬車の中では、腰を落ち着けておくのも必死だ……。 「す……、凄い馬ですね……」  私は、ギルバート様に問いかける。 「スレイニーベル。この世界に一頭しかいない。冥界の軍馬だ」  外はまだ暗い。だんだん遠くの空が、明るみ始めているけれど、恐らくこの速度なら、夜が明ける前に我が城まで到着してしまうのだろう。  考えてみれば人族の領地から遠く離れた辺境地ドスラクを越えて獣族の領地、そしてその奥地にある獣王の城まで。深夜から明け方に至るこのつかの間に、往復してしまったということだ。  つまり、獣王軍は遥か彼方の領土から、一夜にして人族の城にまで攻め込める戦力を持っているということ……。恐ろしい……。もしも、獣王軍を敵に回したら、大変なことになる……。  取り敢えず、仲良くしておこう。私は王女。外交も重要だ。不自然かもしれないけど、絶やさぬ笑顔で、ニコニコして……。 「まさか、お前……」  獣王様に話しかけられて、ドキリとして、顔を引き締め背筋を伸ばす。  は、半笑いしてたわけじゃないですよ……。 「な、なんでしょうか……」 「あの人に会ったのか?」  ギルバート様が私に聞く。私は少し考えるように一呼吸置いて、答える。 「……あの人って……?」  私の目を見て、そのまま目を見開くギルバート様。 「……会ったんだな……」 「私は……」  言い終わる前に、ギルバート様が話し出した。 「俺たちには、あの人としか言いようがない。名前も知らない存在……。いや、果たして存在するかどうかも、確認することすらできない……」  黙ったままの私。 「だが、この世界が存在する以上、あの人が存在することは明らかだ。あの人……。全てに対する唯一の存在……。つまり……、この世界の創造主……」
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