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ロシュフォル城の朝
まもなく夜が明けて、朝食の時間になった。ロシュフォル家は、毎朝家族全員が広間の食卓に集まって朝食をとる。
いつも私は一番乗りだけど、今日はいつもよりも更に早く食卓についた。獣王様の城から戻ってきて、結局一睡もしてない。今日は、朝食を食べてから一眠りしよう。そんな事を考えていると、メイド長のマーサが私の方にやってきた。
「アンジェリア様。いつもの朝食でよろしいですか?」
「ええ。ありがとう。マーサ」
「ベアクレス様。素敵ですね」
「え?」
「流石、アンジェリア様ですわ」
えええええ。ちょっと待って。ど、どうしてそうなる?
「マ、マーサ! 何か勘違いしていない?」
「アンジェリア様も、そろそろお年頃だとは思っていましたが。あんな大胆な……。憧れますわ……」
いやいや。あなた絶対、勘違いしてる。
「マーサ。違うから!」
「ああ……、想像するだけで興奮しますわ……。どんなでした? 荒々しくパジャマを引き裂かれたんでしょう? そして、あの逞しいお身体で……」
頬を両手で挟んで、ぷるぷると首を振るマーサ。瞳が乙女のそれになっている……。
うわわ。マーサの妄想癖が始まった!
「そ、そんな事、されてないから!!」
「でもその後で、あんな素敵なドレスのプレゼント……。なんて、ロマンチックな方なのでしょう……。激しさと優しさ……。ああ……、私のイメージする大将軍。ベアクレス様のイメージにぴったりですわ……」
「違うったら!」
「そんな、隠さなくてもいいんですよ。もう、アンジェリア様もそういう時期なのです。私には全て分かっています」
私には、何にも分かんないわ!
「アンジェリア姉様……」
震えるような声に振り返る。見ると弟のパトリックが立っていた。
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