王女様が戻ってきた

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王女様が戻ってきた

 意識が飛んで、気が付くと、獣王ギルバート様の城。大広間の中央に再び戻った私。  奥のソファーで横になっていたネズミ男ギュネスが、強烈な光に気付いて飛び起きた。それと同時に光の使徒は、光の柱と共に消えていった。 「うをぉう! 戻ってきた!! ギルバート様をお呼びしなくては!!」  広間に駆けつけたギルバート様は、私を見るなり語りかけてきた。 「ウリアは、俺に何かを言っていたか?」  首を振る私。 「そうか。やっぱり、得体の知れないやつだ。結局俺は、ウリアに使われただけってことだな」 「ギルバート様……」 「まあ、いいだろう。 獣王といえどウリアを前にしては、取るに足らん存在だってことだ。そもそも獣族は、人族や魔族のように神なんてもんを信じたりしちゃいねぇ。目の前に存在するこの世界が全てだ。俺は、この世界だけを信じるし。俺とウリアの関係も、そういう事だ」  獣王様の言葉も分かる気がするけど、私は実際にその存在に触れてしまった。あの人を感じてしまった……。 「さて。夜明けまでに、お前を返さなきゃな。行くぞ」  そう言って、大広間の入り口の方に向かう獣王ギルバート様。  入り口に向かう私たちの前に、眠そうな目を擦りながら猫耳娘のミアが現れた。 「わー。あっという間に戻ってきたのね」   そう言いながら、私の周りをくるりと一周する。 「随分早く戻されたわね。けけけ! さては、一目でウリア様に嫌われたのね! 言わんこっちゃないわ」  ミアは満面の笑みで、私に悪態を吐く。  ウリア様にではないけど、確かに嫌われてしまったのかもしれない……。  ギルバート様に連れられて、宮殿の外に出ると、獣将軍ベアクレス様が待っていた。その後ろには、来たときと同じ馬車。そして、改めて見上げる。でかい馬……。八本足の馬……。ほんとうに馬なの?? 「あはは!? スレッピー。あんた、何で荷台なんかに繋がれてるの?」  後ろからついて来たミアが、近寄ってその馬の鼻を撫でる。巨大な馬は、ブルルと気持ちよさそうに鼻を鳴らす。 「うそ? スレッピーが馬車を引くの? このチンチクリンの送り迎えだけのために?? ありえない!!」  あわわ、また怒り出した……。しかも、相変わらずのちんちくりん呼ばわり……。なんだか、この子とは、とことん相性が悪いみたい……。でもウリア様たちの前で、身なりだけは恥をかかずに済んだ。その御礼だけは、言っておこう。 「ミア。このドレス、ありがとう。今すぐ脱ぐから……」 「いいわよ! それ、あげるわ!」  ミアが言った側で、ギルバート様が私を抱き上げた。ギルバート様は、そのまま荷台に飛び上がって、私を座らせた。同時に、ベアクレス将軍が馬の手綱を引き、馬車が走り始める。 「じゃあね! アンジェリア!!」  助走しながら向きを変える馬車に向かって、ミアが声を張り上げてきた。  ミア。私の名前。覚えてくれたんだ。  私は幌から顔を出して、ミアの方を見たけど、ミアはそっぽを向いていた。それでも、なんだか視界の端で私を見ているような気がして、遠ざかっていくミアに大きく手を振った。
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