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「良かった……ずっと紫澤と一緒じゃなくて」 「ちょっと!翔琉、周り大丈夫ですか?!」 辺り構わず抱き締める翔琉に、俺は思わず小声で注意する。 「いつも言ってるが、そんなことはどうでもいいんだよ。それより、颯斗はどこで寝泊まりしてるんだ?この距離じゃ、家から通うこともできないだろ?!」 そう言って更に腕の力を強める翔琉の、磯臭い俺とは違う、高級で洗練されたムスクの香りがフワリと俺の鼻を掠めた。 安心する翔琉の香りに、俺は思わずここが外であることを忘れそうになる。 だがすぐ後ろに車の通る音が聞こえ、我に返った俺はその腕を振り解き、背を向けた。 「俺は……すぐそこの民泊の大広間で、スタッフ皆で雑魚寝です。紫澤先輩は、別であそこのリゾートホテルに泊まってます」 冷静に答えながら、俺は目の前に見える山の方を差す。 「雑魚寝って……紫澤がいないとはいえ、襲われたら危険だ。いつまで働くのか知らないが、今夜から俺の泊まってるホテルに来い!!」 真剣に話す翔琉に、俺は呆れた表情を向ける。 「あの、そんなモノ好きは翔琉しかいません。それに、消灯までに帰らなかったら逆に怪しまれますから!」 「いいじゃないか。どうせ、バイトの連中も一夏の相手とその辺のラブホにしけこんで楽しんでるんだろ?」 悪びれも無く、「男なら当然」とばかりに翔琉はそう話した。 「……ここのバイトの人たちは、見た目チャラいですけどそんな人たちじゃないです!!だいたい、何故翔琉がここにいるんですか?!店長に俺のことを聞いたとは言っても、天王寺さんも一緒だったし……本当は撮影で来てるんですよね?」 突然黙り込む翔琉に、俺はそっと肩越しに彼の様子を上目遣いで伺った。
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