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ギラギラと砂浜を照り付ける太陽。
鼻につく潮の香り。
はしゃぐ若者たちの声。
「なぁ、颯斗。俺もあっちへ行って可愛い女の子ナンパしたいよ」
恨めしそうな声で、俺の高校時代からの親友赤羽心織が呟く。
「だいたい心織は、動機がいつも不純過ぎるんだよ。どう考えたって、遊びに来てる訳じゃないんだからナンパしてる暇なんて無いだろ」
ネイビーのエプロンに、白い半袖Tシャツを肩まで捲った俺、高遠颯斗はテキパキと客から注文された料理を準備する。
「うっわー。颯斗クン、厳しい!てか、嫌々バイト引き受けたわりには、堂に入ってるんじゃねぇ?」
目の前に出された焼きそばやイカ焼き、瓶ラムネ等を心織はぶつぶつ言いながらトレーに載せていく。
「ほら心織、冷めない内に早くお客様のところへ持っていけよ」
普段接遇が厳しい六本木の高級カフェで給仕している俺は、ここ海の家でもその能力をキッチンスタッフとして遺憾無く発揮していた。
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