好きって言わない

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何考えてんだ!? 全然分かんねぇし!理解出来ねぇ! カミングアウトって…いったいどこまでしてるんだ?同級生連中は知ってた。じゃあ家族は?お前のとこの華道の分家の人間には?仕事上、付き合いのある取引先や業者には? いくら最近の世の中が性に対して寛容になったとは言え、あんな事を堂々とテレビで告白して、よく思わない人間は絶対いるのに。男同士なんて気持ち悪いと、平気で口にする人間だって大勢いる。それなのに、訂正のきかない生放送で、堂々と顔出しまでして… 何考えてんだかオレには分からねぇよ! 分からない。 けど、全てはオレの為なんだって事だけは分かる。アイツは、オレを手に入れる為なら、本当に何だってするつもりだ。 怖い。アイツの想いが怖い。真剣で、真っ直ぐな想いが怖い。 怖いのに、嬉しいーーー… 「何なんだよっ…オレが…オレが応えなかったらどうするつもりなんだよ!ホントにテメェ一人で恥曝しになるつもりかよ!!」 男に惚れて、十年もしつこく想いを寄せて、フラれたくせにまた告って、往生際の悪い馬鹿で恥ずかしいヤツだって… 「お前だけがそう思われるじゃねーか…」 まるでオレがアイツの人生を握ってるみたいだ。アイツが幸せになるのも不幸になるのも、オレの答え次第。オレに惚れまくってる嵩彦は、オレが応えなきゃ不幸になる。あんなにオレを翻弄するくせに、あんなにオレを苦しめて…貶めたくせに。アイツはオレのたった一つの答えだけを待ってる。 アイツの覚悟が、オレの十年の努力を簡単に打ち砕いてしまう。 「ずりーよ、嵩彦」
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