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誕生日プレゼント
学校だよりに先生の誕生日が載っていた。
今日がその日だ。そのために、私はわざわざプレゼントを用意してしまった。今までケガの時に世話になったお礼の気持ちを込めただけだ。特に意味はない。使えそうなもの……。色々迷った。
アクセサリーの類は意味深すぎるし、あいつはつけないタイプだし。
置物やマグカップや時計やハンカチなど色々、考えに考えた。
食べ物だと形に残らないし――って私は形に残したいのか?
結局、一番使うであろうタオルをプレゼントすることにした。
なんて言って渡そうか?
ドキドキしながら、帰宅を待つ。
渡すタイミングを見計らう。
親がいるので、外で渡すことに。
どれくらい待っただろうか?
流牙がようやく帰ってきた。
「どうした?」
少し驚いた顔で私を見た。
「これ、今までのお礼。今日、誕生日でしょう?」
「あぁ、ありがとう。自分でも誕生日だってこと忘れいてた……」
「おまえは、誕生日いつだ?」
「もう過ぎたよ」
すると一瞬、先生は何か考えて思いついたようだった。
「これ、プレゼントのお礼」
先生は道に咲いていた一輪の花を差し出した。
それはきれいな花で人生初の男性からの贈り物でもあった。
「これは仮のプレゼントで、あとでちゃんとしたもの用意するから」
「いいよ。気を遣わなくて」
家の中では彼のためにケーキとごちそうが用意されている。
彼はそのもてなしに、少し涙ぐんでいたように感じた。
「今までで一番幸せな誕生日です。ありがとうございます」
彼は、丁寧にお辞儀をした。
「寿くんはもう家族なのだから、遠慮しないで食べてね」
お母さんもお父さんもみんなが笑顔の誕生会だった。
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