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それは疑いようもなく心からの笑顔で、私は安堵を隠せなかった。
―――それと同時に、いくつかの疑問が脳裏をよぎる―――何故私はここにいるのか?何故私の目の前に安藤カナがいるのか?何故私は動けているのか?
そして、最も大きな疑問が浮かぶ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
先程、頭に入り込んだ記憶は何なのか?
何故、私は経験してもいないことをさも当然のように『思い出した』……?
疑問は尽きないのだが、とにかくカナのことを何とかしなければならない。幸いもう夕方だ。
「カナ、もう日が暮れかけている。一緒に帰ろうか」
「あっ……、そうだね、一緒に帰ろう!」
これでいい。カナを家に帰してしまえば一人の時間は作れる。そうすれば少しは考えもまとまるだろう。
帰り道、カナは終始楽しそうに話している。私はというと、何もかもが意味不明なこの状況に困惑しきっていて相槌も少し適当だった。
だが、この適当な相槌を気にもしない所からもカナが上機嫌であることがうかがえる。それだけで私も嬉しくなり、落ち着きを取り戻してきた。
しばらく歩いていると、急に目の前に人影が現れる。
その人影は、機敏な動きでこちらに近づくと、
「死んじゃえ!」
の言葉とともに何かを振り下ろす。
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