act7

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呼吸が止まるような衝撃を受け、目を見開いたまま動けなくなった。 自分の耳が信じられなかった。 寝耳に水すぎて、この人は酔っているのだろうかと疑ってしまうほどだったが、それはありえない。彼はザルである。 言葉を失う美月に畳み掛けるように彼は思いの丈を打ち明けた。 「八年前、家柄とかしきたりとか本来考えなければならないことが全部どうでもよくなるくらい君を好きになった! 初めてだった。こんなにも誰かを欲しいと思ったのは。一秒たりとも離れたくない、誰にも渡したくないと(こいねが)ったのは」 強い力を秘めた眼差しが美月の瞳を射抜く。 苛烈な瞳に囚われ(まじろ)ぎもせずに見つめれば、彼は震い立たせるように言葉をつないだ。 「好きだ。美月が好きだ。 俺にとって美月と別れてからの八年間は、空白の時間だった。何度も忘れようと決意したはずなのに、会ってしまったらもう無理だ。 自分から別れを告げておいて、勝手なことを言って怒るかもしれない。 もう気持ちも離れているのかもしれない。 だけどこれだけは聞いてくれ。俺の気持ちはあの頃から何も変わっていない」 口を挟む隙も与えないほど彼は想いをぶつけてきた。信じられなくて、愕然としながら頭を振る。 「うそ……だって、あのとき……」 「あの日の夜、俺は君に嘘をついた。 本当は別れたくなんかなかった。離したくなんかなかった!」 葛藤を窺い知れる彼の声に心の叫びが如実に表れているようで、途端に鼓膜が震えたような気がした。 彼は一瞬言葉を切ると、こちらを射抜く眼差しに力を込めて、己を責め苛むように続けた。 「俺はあの日からずっと……君を手放してしまったことを……後悔している」 吸い込まれそうなほどに深く、漆黒の闇に染められた瞳と見つめ合う。 美月は何かに取り憑かれたように、やがて紡がれる言葉をただじっと待っていた。
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