act8

2/51
前へ
/390ページ
次へ
彼と結ばれてから早くも半年が経ち、京都に来て二度目の梅雨入りを迎えた。 週末の土曜日、バイトを終えてやってきた美月はスペアキーを使い、主が不在の玄関に足を踏み入れた。 電気をつけて台所に着くなり手を洗う。 ここにくる前にスーパーで調達した食材を並べると、早速夕食の準備に取り掛かった。 今夜のメニューは夏野菜のキーマカレーだ。 恋人と会うのは三週間ぶりのため、美味しい料理を振る舞うべくいつも以上に気合が入る。 お米を研いで炊飯器のスイッチを入れたところで、想定していた時間よりも早くに家主が帰ってきた。 「ただいま」 視線が合わさるなり目元を垂らして微笑む彼に、美月の表情にも自然と笑顔が溢れる。 「お帰りなさい。お腹減ったでしょ? もうちょっと待っててね、今急いで作るから」 「俺も一緒に作る」 そう言って、彼は当然のようにキッチンに降り立つ。 男の人が台所に立つイメージがなかったため、最初にそれを聞いた時はとても驚いたものだ。 おまけに大学に入ってから自炊を始めたとは思えないほど手際がいい。元々手先が器用なのだろう。 彼いわく、料理はもの作りの一環らしく、実験をやる感覚と同じなのだという。 理系男子はたまに突拍子もないことを言うので、そのたびに心がほっこりさせられる。
/390ページ

最初のコメントを投稿しよう!