act8

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カレーが出来あがったので、テーブルを挟んで席に着く。 一緒に作ったにも関わらず美味しいと褒め称えてくれるので、美月は面映ゆい気持ちになりながら笑顔で話しかけた。 「研究、毎日大変でしょ? 疲れてない?」 「うん。でも美月の顔を見たら吹っ飛んだ」 とびっきりの笑顔を零す彼を見て胸がキュンと高鳴る。こうして二人の時間を過ごせることがとても幸せだった。   遡ること四月、彼は四回生に上がるなり桂キャンパスの研究室に配属された。 それに伴い、物理的な問題を考慮してキャンパス付近に下宿を申し入れ、生活の拠点を変えたのだ。 とはいえ、本人の意向で賃貸契約を続けており、実験のない週末になると美月と会うために北白川のマンションへ帰るようにしている。 おおよそ月に一から二度のペースで二つの街を行き来する彼はいわゆる二拠点生活を送っていた。 四回生になってからの彼はどっぷりと研究室に入り浸る生活を過ごすようになった。 研究内容もより専門的になり、加えて八月には院試を控えているため勉強量も圧倒的に増えた。 実験づけの毎日で、大量のレポートや課題の消化に費やされる日々だ。ひどい時は朝から晩まで研究室にこもっているのだという。 彼の生活の拠点が変わり極めて多忙になったことから、以前に比べて会う回数は格段に減ってしまった。 でも忙しい中でも合間を見計らってマメに連絡をくれたり、こうして恋人と会う時間を作って会いにきてくれる。 寂しくないといったら嘘になるけれど、それ以上に幸せでいっぱいだった。 心から愛されていると伝わっていたから。
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