act8

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「んで、失ってからようやく妻の大切さに気づいた父親は、今では積極的に母親へ歩み寄って虎視眈々と復縁を狙ってる。 母親はいい気味だとか言って邪険に扱ってるみたいだけど」 元サヤになるのもいずれ時間の問題かもな、と彼はどこか人ごとのように呟いた。 「母親が離婚に踏み出したとき、俺は真っ先に家を出るチャンスだと思ったんだ。 周囲の反対を押し切って迷うことなくついていった。きっと俺は母親に似たんだろうな」 目尻を下げる彼につられて、美月も優しい顔になる。 清々しい表情からは、後悔や未練など一切ないように思えた。 「ありがとう。話してくれて」 生きていれば、誰にだって立ち入って欲しくない部分がある。 彼に何らかの事情があることは少なからず察していた。 でも、あえて触れてこなかった。それが恋人への労わりや優しさであると思っていたから。 きっとその気持ちは彼にも伝わっていたのだろう。 こうして打ち明けてくれたことに美月は感慨を抱いた。 「……いつか会ってみたいな。浬のお母さんに」 「今度紹介するよ。 きっと美月のことすごく気に入ると思う」 「そうだったらいいな」 屈託なく笑う美月を、彼が愛おしい者を見る目で見つめる。 二人を纏う空気は、優しさで包まれていた。
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