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清宮はうんともすんとも言わず、無言で書類を一瞥すると、美月をじっと見つめた。
「君、前職では経理にいたみたいだけど、それはどうして?」
「どうしてとは……?」
「職種が違うからただ単に疑問に思っただけだ」
不機嫌そうに吐き捨てると、返答に迷う美月など意に介さず、清宮は書類に視線を戻し、コーヒーにありつく。
味がよろしくないとすかさず嫌味が飛んでくると歴代秘書に聞いていたため、ボスの反応に安堵した美月は気を取り直して本日のスケジュールを読み上げる。
感情を込めないように淡々と声に出していく間も、清宮はこちらに目線を合わせようとすらしない。
「何か変更等のご要望はございませんか?」
「特にない」
そっけない返事が返ってきて、美月は上司が持ち帰った資料や名刺を受け取ると、一礼してから執務室を出た。
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