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専属秘書デビューを果たした初日はあっという間に過ぎた。
午前中は電話対応の合間に溜まったメールを捌き、午後の会議の準備と合わせて弁当の手配。
そうこうしているうちにお昼となり、午後は清宮から受け取った出張先の資料や名刺の整理に、掛かった経費の処理。
それから一週間のスケジュールの見直しをして、会食と出張の手配を済ませてから会議の議事録を文書にまとめる。
ふと見上げると、時計の針はもうすぐ終業時間を迎えようとしていた。
――いけない。そろそろ帰社時間だわ。
慌てて席を立ち、ボスが潜む執務室へと向かう。
海外出張から帰国した日はさすがに疲れていたのか、清宮は会食の予定も入れず、仕事を終えたら帰っていった。
エレベーターまでボスを見送った美月は執務室へ戻ると、慣れた手つきで花の水替えをする。
ふと窓に視線を移すと、朱色だった夕空は紺青を仰いでいた。
眼下ではビル群の灯りが入り始め、きらびやかな光に彩られている。
「綺麗……」
本社ビル最上階から都心の街並みを一望できるのは、秘書として唯一の特権かもしれない。
叶うのならこれから先もずっと、この景色を拝められるように、役員秘書として邁進していきたいと心から思った。
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