act2

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施錠をして会社を出た頃には日は沈み、夜の(とばり)が下りていた。 ――お腹減った……。 雑務に追われ歩き回ったせいか、足がいつにも増してだるくて重い。 秘書は華やかそうに見えて地味な仕事だとつくづく思う。 ――夜ご飯、どうしようかな……。 会社の最寄り駅から美月が一人で住んでいるアパートまで、電車と徒歩を合わせて四十分ほどかかる。 うろ覚えだけど、確か冷蔵庫の中には食べ物になりそうなものはなかったはず。 今からスーパーに買い出しに行くとなれば、帰り着く前にスタミナが底をついてしまいそうだ。 駅を目指して歩いていると、ふと懐かしい匂いに鼻をくすぐられて美月は足を止めた。 視線を移した先には、最近オープンしたばかりのラーメン店がオフィスビルに挟まれるように建っている。 「うわ、懐かしい……」 関西の国立大学に在籍していた頃、帰りがけに通い詰めるほど食べ尽くした懐かしい味が、美月の脳裏を奮い起こす。 大学の近くにひっそりと建ち、知る人ぞ知るそのお店には、かけがえのない大切な思い出が詰まっている。
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