彼はせめぎ合う二人へ追い迫ると、美月を捕らえる山岸の手首を掴み、男の腕を無駄のない動きで背中側へ捻りあげ、ためらうことなくアームロックをかけた。
「いでデデデデェッ!」
めちゃくちゃ情けないことにたったそれだけで泣き叫ぶように喚く山岸は駄々をこねる子どもの手足みたいに暴れ出している。
すると清宮は敵の手首をありえない方向に絞りながら右足を一歩大きく踏み出し、右前腕部を強く押し当て、腰を落として下方にねじ伏せた。
すかさず手のひら全体で男の後頭部を掴み、顔面から地面へ押さえ込む。
「――黙れ。息の根を止めるぞ」
地の底から響くようなドスの利いた声に男の絶叫がピタリと止まった。顔面蒼白の美月までも思わず腰を抜かしてその場にへたり込む。
「骨をへし折られたくなかったら抵抗をやめて降伏しろ」
もうすっかり白旗を上げる山岸だが、清宮はそれを知ってか知らずか、真っ直ぐに伸ばした敵の腕をこれでもないくらいに捻り曲げている。
手加減を知らない男の腕力に、額に汗を噴出させる山岸は「やめてくれぇぇ」と情けないくらいに泣き言を叫ぶ。
それを無表情で見下ろす清宮が動きを止めて腕を解放する。力尽きたように項垂れる山岸に、彼はとどめを刺すように言い放った。
「いいか、よく聞け。おまえの個人情報はすべて把握している。貴様にはどこにも逃げ場がないと、肝に銘じておけ」
「は、はい……」
「室長っ!」
するとそのとき、車に乗り合わせた上司を探し回っていたのか、硬い靴音を立てながら酒井が姿を現した。
時間帯からして会食の帰りだったのだろう。周囲を見回し愕然とした表情を見せる酒井は素早く状況を察して上司のもとへ駆け寄ると、「ここは僕が代わります」と冷静に告げる。
静かに頷く彼がすぐさま酒井に男を託し、美月のもとにすっ飛んできた。
「美月っ! 大丈夫か!?」
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