クモ人間 three

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クモ人間 three

 朝、目覚めると身体中の感触がいつもと違っていた。  驚いて服を脱いだら、先ずは厚い胸板が目に入った――自慢じゃないが僕はインドア派だから、こんなに立派な胸筋や腹筋になるはずが無い。  鏡に映る僕は、確かに僕なのに僕じゃなかった。  しっかりと服を着込んでから伯父さん伯母さんと食事をしたが、僕の変化に気付いた様子は無かった。因みに、僕の両親は僕が幼い頃に失踪し、物心がついた時分から彼等に育てられている。  取敢えず登校したが、学校でも奇妙なことが続いた――カフェテリアでランチ中、掌にカトラリーが吸い付いた時には驚いた! でも、意地の悪い連中の頭にトレーがぶつかった時には、溜飲が下がった。あれは、突然僕に備わった不思議な能力のせいだった。  その後、違和感があって掌をじーっと見ていたら、小さなギザギザしたものが生えてきた。少し気持ちが悪い。その手で垂直の壁に触れたら、引っかかって吸い付くような感覚があった。試しにギザギザの向きを確認しながら壁にぶら下がり、その手を上へ上へと移動させてみたら、スイスイと垂直な壁をよじ登ることが出来た。  よく見ると、胸や腹だけでなく身体中にしなやかな筋肉がついていたので難なく全身を動かすことが出来た。これには僕もかなり驚いた。    そしてもっとビックリしたのは、軽く手を前に振ると粘っこい糸みたいなものが飛び出したこと。上手くコントロールすれば、どうやら物を引き寄せることや自分がぶら下がることも出来るみたいなんだ。  でも――そんな特殊能力を上手く使いこなすのには練習が必要らしい。  昼間のカフェテリアでの周囲の反応を見るにつけ、練習はこっそりとやらなくちゃいけないな、と思った。
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