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クモ人間 four
あれからの僕は、特殊能力をコントロールする練習に励んだ。
もう少し時間を要すると思っていたが、細胞レベルから特殊能力を使いこなす力が備わったらしく、僕の身体機能は急激に順応していった。
そして驚くほど研ぎ澄まされ敏感になってしまった五感の中でも、聴覚は超音波や微弱な空気の揺れにまで反応するようになってしまった――
『キャー! 助けてー!』
ここから南東方向、数キロ先辺りから女性の悲鳴が聞こえてきた。
「助けに行かなきゃ!」
しかし……マンハッタンのビルの谷間を特殊な糸を操りビュンビュンと、素顔の僕が飛び回るわけにはいかない。そこで僕は考えた。顔全体をマスクで隠し、身体にフィットした動きやすいスポーツウエアの上下に身を包めば、誰にも気付かれることなく人助けができるだろうと。
「すぐ行くから待っててッ!」
そして僕はこの特殊能力を使い、たくさんの人々を助けることになった――しかし知らず知らずのうちに、多くの敵を作ることにもなってしまったのだ。
出る杭は打たれる、ということなんだろう。
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