要(かなめ)

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要(かなめ)

『……駄目だ! こんなの駄目だ!』  深い溜息を吐いた(かなめ)は、パソコンのモニターを睨みつけながらぶつぶつとなにやら呟いていた。 『主人公たちの名前が悪いんだ! 失敗したなあ……』  先日、(わたる)に協力してもらった内容をヒントにして、コンテスト用の短編小説を仕上げた。そんな要の目下の悩みは、この話がハッピーエンドではない(・・・・)ことだ――感情移入してしまい、『縁起でもない』と思ってしまったのだ。 「おーい! (メシ)の支度が出来たぞー!」  階下から航の呼ぶ声がする――今夜は、航が夕食当番だ。 「わかった。すぐ行く!」  どうしようか、航に内容はオフレコにして相談してみるか……? 『良いんじゃないかと思うぞ。だいたい、それって架空の話だろ? 俺たちはこんなにうまくいってるし、関係無いんじゃないか?』  ああ、そうだな。うん、そうだ! 自分たちは上手くいってるし、僕はクモ人間じゃないし、な。  やっぱり、航に話して良かった――今日が締切日だ。夕食が済んだら、早速ポチってこよう。  そして、今夜は―― 了。
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