二.

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◇◆◇◆◇ 「わーすごい!」  ログインしたライは、ログインポイントである泉から見える町並みを見て嬉しそうに声を上げた。 「わ、わ、シーッ」  周囲の視線に気づいたシオンはあわてて人差し指を口に当てる。 「ごめん……お」  ライが横のシオンを見る。ゲーム内の彼女は、桃色の明るい髪をツインテールにした現実とは真反対の容姿をしている。メイクもできるため、別人のようにすることは可能だった。 「君がシオンちゃんだね、覚えておくよ」 「……ありがとう、ライくん」  ライはといえば、藍色の髪に黄色がかった瞳もこちらもまた現実とは違う容姿をしている。モノクルもかけていて賢者にも見える。  彼らのその姿はアバターと呼ばれる、いわば分身だ。  しかし、あくまでも現実世界ともリンクしているため、意識、記憶、それらは美希たち自身そのものだ。 「俺はログインするの初めてだからさ、いろいろ教えてよ」 「わ、わかった。えっと……じゃあまずはお店見て回ろっか。何があるのかを知っておいたほうがいいかも」 「オッケー!」  美希の提案にライは快諾する。よく見れば、彼の装備は初心者(ビギナー)向けであり、シオンに比べればまだ改善の余地ありといったところだ。 「マップがあればいいのになー」 「あ、えっとね、右腕についてるリングの横についてるボタン押したら見れるよ」 「そうなの?」  シオンのアドバイス通りにすると、フォンという軽快な電子音とともに小さな画面が空中に出てきた。現在地を示すところは赤く点滅している。 「わーほんとだ! ありがとう!」 「私も昨日知ったばかりなんだ」  褒められた気分になって、えへへとシオンが笑う。 「昨日って、いつも来てるの?」 「うん。土日以外は、放課後に」 「へえ。じゃあこれからは俺も放課後来よっかな!」 「遠いのに、大丈夫なの? さっき、近所にはないって……」  シオンが戸惑ったように尋ねる。毎日来るとなると、負担が大きそうだ。だが、彼は笑ってうなずいた。 「うん。シオンちゃんに会いに毎日くる!」  男の子にそんなことを言われた経験のない彼女はボンッとあからさまに顔を赤くする。 「シオンちゃん?! 大丈夫?!」 「へっ、あっ、大丈夫、大丈夫……!」  パタパタと両手で顔の熱を逃すように仰ぐ。全然熱は逃げてくれない。ますます照れてしまうのを隠すようにゴホンと咳払いして話題を変えることにした。 「そういえば、ライくんはジョブどうするの?」  アバターが選べるジョブ、魔法使いの世界なので魔法使いを選べることは当然なのだが、例えば司教や教師といった職業もサブいわゆる副業的な位置のものとして選べる。もちろん、途中での変更も可能だ。 「迷い中。一応、魔法の威力が一番強い賢者にしてみてるけど……」  どうりで、賢者のような装いのわけだ。
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