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「シオンちゃんは何にしたの?」
「私は……、騎士にしたよ」
「騎士? それって、魔法の威力あんまり強くないやつじゃない?」
「うん、そう。でもいいの」
シオンは微笑んだ。騎士はいわゆる物理攻撃を得意とするジョブだ、あまり選ばれない。“まほハロ”攻略サイトでもオススメしないジョブとして紹介されている。
「みんながみんな、賢者とか、司教とか、聖女とか……魔法の威力が強いものにいくと、騎士みたいに物理に強いジョブがいないと困るでしょ」
「あ、パーティ編成とか? クエストで行ける場所も、ジョブ指定してたりするもんね」
「うんうん。だから、結構需要あるんだ、私」
誰しもができる“魔法が強い”ジョブを選ぶ必要はない。自分が選んだのなら、それが他の人のためにもなることなら。
―それに、私は……友達多くないもんね。
もしかしたら、現実よりも“まほハロ”での友人のほうが多いかもしれない。騎士である理由は、強い弱いではなく、自分の居場所があるかどうかだった。
「ふうん。じゃー俺はこのまま賢者でもいいかも」
「そう?」
「うん! そしたらシオンちゃんとバランスいいもんね!」
「えっ!?」
またも顔が赤くなる事案だ。どうにも、ライという少年は自分を照れさせてばかりだ。
バランスがいい、つまり、これからも一緒に動くことを想定しているということだ。放課後は通うという先程の言葉も、リップサービスではなく本心なのだと分かる。
―ライくんといたら心臓もたないかも……。
異性と、しかもこんなに距離感が近くても嫌だと思わない相手と行動を共にすることが嬉しいと感じる、初めての経験にシオンの心臓はドキドキと文字通り鼓動が大きくなった。
そうやって、その日は地図を頼りにお店を回ったり、練習場で魔法を使う練習をしたりとあっという間の二時間を過ごした。
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