2人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
◇◆◇◆◇
「ただいまー」
「おかえり、美希」
帰宅した美希は母親に声をかけて自室へいこうと階段をのぼる。菜箸を手にした彼女が、階下からのぼる美希へ声をかけた。
「美希、塾はどうだった?」
足を止め、くるりと母親のほうを振り返る。どう答えようか迷って、やっと一言当たり障りのない言葉を出した。
「…………頑張ったよ」
「……そう。晴哉くんのお母さんに聞いたけれど、来週実力テストがあるんですって?」
―そういえばそんなこと言ってたっけな……。
ライとの幸せな時間がもはや霧のようだ。母親は教育熱心、美希もそれに報いようとしていたが最近は疲れてしまっていた。今日のように、勝手に塾に行かず遊ぶことも増えてきていた。
「それが何?」
「結果が出たら教えてね」
「分かった」
軽く答えると、再び階段をのぼる。ドアが閉まる音を聞いた母親は、人知れずため息をついた。
「美希がゲームセンターに入り浸ってるなんて、晴哉くんの見間違いよね」
やれやれ、といいたげに肩をすくめながら、彼女は台所へと戻っていった。
最初のコメントを投稿しよう!