三.

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◇◆◇◆◇ 「ただいまー」 「おかえり、美希」  帰宅した美希は母親に声をかけて自室へいこうと階段をのぼる。菜箸を手にした彼女が、階下からのぼる美希へ声をかけた。 「美希、塾はどうだった?」  足を止め、くるりと母親のほうを振り返る。どう答えようか迷って、やっと一言当たり障りのない言葉を出した。 「…………頑張ったよ」 「……そう。晴哉(せいや)くんのお母さんに聞いたけれど、来週実力テストがあるんですって?」 ―そういえばそんなこと言ってたっけな……。  ライとの幸せな時間がもはや霧のようだ。母親は教育熱心、美希もそれに報いようとしていたが最近は疲れてしまっていた。今日のように、勝手に(・・・)塾に行かず遊ぶことも増えてきていた。 「それが何?」 「結果が出たら教えてね」 「分かった」  軽く答えると、再び階段をのぼる。ドアが閉まる音を聞いた母親は、人知れずため息をついた。 「美希がゲームセンターに入り浸ってるなんて、晴哉くんの見間違いよね」  やれやれ、といいたげに肩をすくめながら、彼女は台所へと戻っていった。
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