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「鏡よ、鏡よ鏡さん。鈴木純也君が愛しているのはだあれ?」
「それは貴女、吉田麻依さんです」
麻依が鏡に写った姿の後、次のシーンに切り替わると鏡の奥には昔のヨーロッパにいた様な魔女がニヤニヤ笑っている。
「じゃ、鈴木純也君が初体験するのはだあれ?」
「それも、貴女です」
鏡には不安気な麻依の表情の後、魔女が吹き出して笑うのが見てとれる。その様子を見て麻依は恥ずかしくなる。毎日毎日飽きもせず同じ質問を繰り返しているから魔女は笑うのだろう。でも確認せずにはいられない。純也君は学校でも1、2を争うイケメンなのだ。顔だけではなくスポーツも得意なアイドルである。それに比べ麻依はポッチャリした外見にニキビが出来た肌、それに近眼の黒ぶち眼鏡である。純也君が麻依を好きになった理由が解らない。麻依は大事な物を扱うように鏡にカバーを掛けた。この鏡に初めて魔女が写ったのは半年程前だった。リサイクルショップで買ったこれはレトロな感じが可愛くて数万円もだして買った高価な品だ。
ああ、これは例のあれだ。白雪姫にでてくる鏡に違いない。直感的にそう感じた後、1年前の高校1年の時から付き合っている純也君の事を聞いてみた。魔女はすらり麻依の聞きたかった答えを教えてくれた。
良かった、やっぱり純也君はわたしの事が好きなんだな。
麻依はこの上ない安堵感を覚えた。それから毎日癖になってしまい同じ事を繰り返し聞いている。
「鏡よ、鏡よ鏡さん。鈴木純也君が愛しているのはだあれ?」
「それは貴女、吉田麻依さんです」
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