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 よりちゃんが家まで送ると言い出した。  こんなに近所でしかも男なんだからと断ったがよりちゃんは譲らなかった。 「俺がちょっとでも長く那月と一緒に居たいんだよ」  そんなことを真顔で言われてしまったら頷くしかない。よりちゃんは嬉しそうに俺を抱きしめるとじっと見つめる。俺は正面から見る顔の近さに緊張して勝手に体が強張ってしまう。  それをどう取ったのか──額に唇で軽く触れただけで体を離された。  よりちゃんは明日も朝からバイトだという。俺が明日は友達とプールに行くと言うと目を輝かせて食いついてきた。 「俺も那月とプール行きてえ。つーか行こ?  プールと海だったらどっちがいい?」 「じゃあ、海」 「海な。俺しあさってならバイト休みだ。  予定ある?」 「ううん。ない」  あっという間に海に行く予定が決まった。  そんな話をしている間にもう、うちの前だ。 「じゃあ次は、しあさってな」  よりちゃんの手が俺の頭を撫でた。 「うん。おやすみ」 「おやすみ」  手を振った姿がだんだん暗闇に紛れていく。  おかしい──いま別れたばかりで  もう会いたくなってるなんて。  またすぐ会えるし会いに行ける。  なのに遠ざかる背中に切なさが胸にせまる。  よりちゃんと居ると楽しいからだ。  よりちゃんが俺に──優しすぎるせいだ。
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