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次の日の夜、八時過ぎに連絡があった。
『これから会うには遅すぎる?』
昨日も今日もバイトで疲れてるはずなのに会いたいと思ってくれる。時間なんか気にせず会いたい。
自分の部屋から飛び出して母親によりちゃんのことを話しに行くと驚いたことに覚えていた。
「あー久坂さんとこのお兄ちゃん、あんたよく遊んで貰ってたね。小さい頃からお行儀よくて賢くて、格好良い子だったわねえ」
懐かしそうに頬に手を当て思い出している。
かなりの好感触だ。
「そのよりちゃんが大学生になって、すぐ近くに一人暮らししてんだよ……今から遊びに行ってもいい?」
「あらそうだったの?──まあ夏休みだしねえ。迷惑じゃないならいいわよ」
これはまさに昔のよりちゃんの素行の素晴らしさの賜物だ。
俺がすぐにOKの返事をすると八時半には家まで迎えに来てくれた。
なぜか母親までいそいそと出てきてすぐ引っ込むと「一人暮らしなら食事が大変でしょう」と、タッパーに詰めた夕食のおかずを無理矢理持たせた。
あれはこれから帰ってくる父親の分だったんじゃないかと思うんだけど、黙っておいた。
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