1549人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
よりちゃんの腕の中で抱きしめられている。
エアコンはこんなに効いてるのに、よりちゃんの体温がそれをかき消すくらいに熱い。それに自分の頬も熱が出たかと思うくらいに火照っている。
「那月……今付き合ってる奴いる?」
声がとても近くから聞こえた。この状況に唖然としていた俺はただただ横に首をふる。
「好きな人は?」
好きな人、と考えてドキッとした。よりちゃんが一番に浮かんだから。でもそれはこんな状況だからだ。
俺に好きな人はいない。まだ誰も好きになったことはない。
やっぱり同じように首をふる。
「あのさ……」
よりちゃんの手が後頭部をゆっくり一度撫でた。優しい手つきだった。
「俺と付き合ってみねえ?」
付き合う……よりちゃんと?
びっくりしてその場で上を向く。思った以上に顔が近かった。慌ててまた俯向いた。
「いきなり、なに……付き合うとか……意味分かんない……」
あまりにぶっきら棒な言葉が口をついてしまう。こんなひどい言い方をしたかったわけじゃない。でも驚きすぎて、どう返していいか分からなかった。
「だよなあ……俺もさ、実際お前と会ってみるまで確信は持てなかった。気のせいだって思いたかったし。でもはっきりした。お前が──那月が好きなんだ」
そう言うと俺を一度ぎゅうっと抱きしめて体を離した。
「だから付き合いたいって思った。
でも突然すぎるよな、こんなの」
そして照れたように微笑む。
「那月は軽い気持ちでいい。俺と付き合うのがどういうことか想像も付かないだろ。だから──嫌じゃなければ試しに付き合ってみねえ?」
「……試しに?」
「そう、期間決めて。夏休みで時間あるから二週間くらい。行動制限も付けるよ。気に入らなければ終了していいし俺もきちんと身を引く。那月にデメリットはないと思うけど、どう?」
最初のコメントを投稿しよう!