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ナツミは自宅に着くと、靴のままで2階の自室に駆け上がった。
部屋に入り、真っ先にベッドの枕元にあるアナログ式の目覚まし時計を見て、
「かなり――ヤバイ」
次に、机の上に目をやると、そこにプレーヤーの本体があった。
「良かった……」
と、つぶやきながら『AI・パフューム・プレーヤー』のストラップに手をかけて、引っぱった。
すると、その本体が、ストン――と落ちた。
「ナツミ、落ち着け」
素早く拾うと胸ポケットに入れて、自宅を後にした。
この『AI・パフューム・プレーヤー』という商品は、市販されているパフューム・チップ(香りの素)を本体にセットして、『ノーズプラグ』という先端にパットが付いた管を鼻に差し込むと、その利用者の呼吸をAIが感知し、自然に近い香りを発生させるという機器なのだ。
元々は調香師などが使う業務用の機械だったのだが、近年、デジタルカメラやICレコーダーと同様に、カジュアルなプレーヤーになって登場したという訳だった。
専用の『パフューム・チップ』は、取り扱い店やホームセンターでも購入できる。
専門店で取り扱っている『パフューム・チップ』の種類は豊富で……
世界各国の草花や果物の香り。
香水や料理の香り。
マニア向けの変った物としては、エンジンの排気臭まであるのだ。
が、ナツミが愛用している『AI・パフューム・ブレーヤー』の上級機種の場合だと、「録匂」――つまり、いま見付けたニオイを『パフューム・チップ』に保存することも出来るのだった。
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