法正伝

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(註釈) 「無行」はそのままの意味ですが 品行が悪い、と訳してみました。 法正なのに品行方正ではない、 というダジャレが言いたくて(銃声 劉備が蜀を取った時、 劉璋側に実は内応者がいたのです。 それが張松と法正でした。 劉璋は漢中の張魯とは仇敵の間柄で、 曹操が荊州を定めたおりに 漢中をも併呑したと聞き及んで 使者を遣って(よしみ)を結ぼうとします。 劉璋伝の引く『漢晋春秋』によると この時の曹操は〝慢心〟しており 使者の張松を冷たくあしらったために 怒った張松が益州に戻って 『曹操とは絶交しろ』と劉璋に 伝えたとかなんとか。 曹操が天下統一に殆ど王手をかけながら 結局事業を完成させられなかった遠因が このあたりの事情にある気がします。 また、張松と法正に共通しているのは 荊州に赴いて、劉備とコンタクトを 取っているという点です。 この二人を惹きつける雄略と人徳を 劉備は確かに備えていたのでしょう。 劉璋では乱世を勝ち残れないと 判断した二人は、真の盟主として 劉備を蜀へと招き入れたのです。 出世できなかったとはいえ 世話になった劉璋をあっさり裏切るのは 感心できませんが、そういった 良心に悖るような行為でも 「必要悪」と断じ、果断さを以て行えるのが 謀略家という人種でもあるのです。 人の話を基本的に聞かない劉備ですが なぜかこの法正の言うことだけは聞きます。
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