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「あ?獣が人様に何言ってやがる?」
「引っ込んでろ!獣に何の関係がある!」
「なら事情を話しなよ。そうしたら、また判断するから」
「言っただろう?獣には、関係、ないってな!」
「!」
拳が振るわれるが、それは簡単にリエルの手のひらに納まりにいく。
パシッ
「その獣より先に暴力って、獣以下じゃないかな?」
「ちっ、クソ!離せよ!」
「まずは対話から、って意思はなさそうだね」
「獣に対話が成り立つかよ!」
リエルは掴んでいた拳を離し、ナックルを手に嵌める。
彼女の言う、お姉ちゃんに救われる前にいた孤児院では当然ながら、お金やお小遣いはなかった。
そこでリエルが見つけた武器こそ、拳や脚、つまりは自分の身体だったのだ。
“お姉ちゃん”の元に来て五年、それはその辺の人ぐらいなら、簡単に制圧できるくらいには成長していた。
振るわれる拳をしゃがむように避けつつ、カウンター気味に肘を腹に入れる。
そこから素早く、反対方向にいるチンピラ貴族に向かってストレートを放つ。
そして最後の一人には後ろ回し蹴りを顎に決めた。
どうやら、チンピラ貴族はこれ以上の格闘はムダだと判断したようだ。
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