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Ⅰ・月夜の出逢い
「自分を変えたい」っていう人,この世の中にはけっこういるよね?でも,方法が分からなくて,みんな諦めてるんじゃない?
そういう時は,魔法の力に頼るのも悪くないと思うよ。
……そう,このあたし,武丸カナみたいに。
――それは,元号が「令和」に変わって間もない五月半ばのこと。
「じゃ,中間テストの結果を返しまーす。各自,テストを振り返って反省点をレポートにまとめるように」
この日は,こないだ終わった一学期の中間テストの,全教科の点数と学年での順位がプリントとして渡される日だった。
担任の野間口やよい先生が,クラスの一人ひとりにそれを手渡していく。あたしの順番は,男女合わせて三十人のちょうど真ん中くらい。
「……次,武丸さん」
「は,ハイっ!」
あたしは先生から受け取った用紙をチラッと見て,小さくため息をついた。
……うん,悪くはない。悪くはないんだけど……,よくもない,と思う。
国語と英語は,まあまあいい。これでも文芸部員の端くれだから。でも,他の教科が……,何だかなあ。特に数学が。
「お前,そんなに悪かったん?」
隣りの席から,なぜか関西弁っぽくからかってきたのは中須駿。あたしの小学校からのクラスメイトで,幼なじみで,……実は好きな人,だったりする。
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