Ⅰ・月夜の出逢い

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放課後の文芸部の部室内。 あたしはパソコンデスクの前に座ってた。左手で机に頬杖(ほおづえ)をついて,右手の指だけでタイピングしながら……。 「――どうしたの,カナちゃん?テストも終わって,やあっと部活解禁になったっていうのに。浮かない顔しちゃって」 「……あっ,風花センパイ」 あたしに声をかけてきたのは,部長で三年生の巽風花センパイだった。彼女は三年生の中では成績トップクラスらしくて,勉強大好き,読書も大好きな,いかにもな"文学少女"っていう感じの人だ。読書好きなのは,あたしも一緒なんだけど。 「右手だけじゃ,うまくタイピングできないよ」 ……いやセンパイ,ツッコミどころはそこじゃないです。 「っていうのは冗談(じょうだん)だけど。カナちゃん,なあんか悩んでるでしょ?全部顔に出ちゃってるよ」 「えっ,ウソっっ⁉」 あたしは思わず,スクールバッグからコンパクトミラーを取り出して,自分の顔を見た。 ……うわ,ホントだ。いかにも「あたし,今悩んでます」って顔してるよ。 「(わたし)でよければ,話聞くよ?カナちゃん,何をそんなに悩んでんの?」 これ以上,風花センパイに心配をかけるのも忍びないので,あたしは自分の悩んでることを,センパイに話すことにした。
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