Ⅰ・月夜の出逢い

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「ねえ,風花センパイ。あたしの取り柄って,一体何だと思いますか?」 「え?……うーん,文章力,創造(そうぞう)のセンス……かなあ。書き手としては,かなり強い武器になると思うよ,私は」 ……うん,それは間違ってないし,()めてもらえたことは(うれ)しい。けど。 「そうじゃなくて……。あたしの,ひとりの人間としてのセールスポイントっていうか,魅力(みりょく)って何だろうな,って」 「……?」 風花センパイは,あたしの()いに首を(かし)げてしまった。 「だって,あたしってすんごく美人ってワケでもないし,成績だってそこそこだし。運動神経だって,そんなによくないし。……言ってみたら,平々(へいへい)凡々(ぼんぼん)な人間じゃないですかあ。だから,なんか一つくらい取り柄があった方がいいのかなあ,って」 平凡であることが,あたしの一番深刻な悩みなのだ。それを理解してくれたのか,風花センパイはあたしにこんなことを言った。 「要するに,カナちゃんは『自分を変えたい!』と思ってるワケね?」 「はい,そうなんです。……でも,簡単じゃないですよねー,そんなの」 あたしだって,今まで何度も「変わりたい!」と思って色んな努力もしてきたけど。どれ一つ実を結んだ試しがなかった。 ……そして,つい現実離れした発想に辿(たど)り着いてしまう。 「あ~あ,いっそのこと,魔法でも使えたら簡単なんだろうなあ……」
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