Ⅰ・月夜の出逢い

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「…………」 これには,風花センパイも絶句(ぜっく)した。というか,コメントに困っているらしい。 「……う~ん,魔法ねえ……。まあ,書き手としては面白い発想だと思うけど」 「ですよねえ。……あっ,冗談ですからねっ」 あたしは一応,そうごまかしておく。でも,これで結構大真面目(マジメ)に考えていたりするのだ。……言わないけど。言ったら,「アタマ大丈夫?」って言われそうだから。 「おっ?武丸さん,今度はファンタジーに挑戦するのかい?」 こちらも三年生の,結城(ゆうき)(タクミ)センパイが,あたしと風花センパイの会話に割り込んできた。 「ええ……,まあ」 あたしは「身の上相談をしてた」と言う勇気がなくて,曖昧(あいまい)(うなず)く。風花センパイは,苦笑いしてたけど。 「へえ,女の子が書くファンタジー小説か。楽しみだなあ」 (えぇ…………?) 結城センパイはあたしの返事を()に受けて,読むことがないかもしれない,あたしの書いたファンタジー小説を期待してるみたいだ。 「カナちゃん,こうなったら本気で魔法モノ,書くっきゃないかもねえ♪」 「風花センパイまで!カンベンして下さいよお……」 あたしの悩み相談は,完全にあたしの新作(予定)の話にすり替わってしまった……。
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