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1日目「出会い」
そう。今思えば、この結末は当然だった。
彼女とは出会いの瞬間から、別れまで、それによって繋がれていたのだから。
だから私は命一杯の笑顔を作った。
一度空になった頭の中に、じわじわと感情が溢れ始める。
そうしてすぐに、喪失感と悲壮感と。愛おしさで満たされた。
「行ってらっしゃい」
私はもう一度静かに呟いた。
これは私と彼女が出会い、そして別れるまでの、ひと夏……。三十日間と少しの話。
この話には、湿度にまみれてねっとりと纏わりつく空気と、断続的に脳を揺らす激しい蝉の音が、よく似合う。
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