タメ口 キャンペーン

1/1
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

タメ口 キャンペーン

はーい、たった今からタメ口キャンペーンを始めまーす 一同 え〜〜っ?! 😧😲🤐😮表情も色々だ 僕はバイトリーダーをやってるんだけど8人いるバイトはいつまで経っても馴染まない それで 考えたのがこの秘策だ 我ながら名案だな それに、もう一つ理由がある 最近、入ってきたバイトの女子大生の中村さん 僕より2歳下の大学1年だ 彼女はあまり笑わないし口数が少ないから何とか笑わせたいと密かに目標にしていたんだ バイト時間にタメ口キャンペーンをやることによって一気に距離を近づけたい タメ口をしなかったら10円づつ徴収して、みんなのお菓子代にするぞって言ってある ぬかりはない 休憩時間 控え室をそぉっと覗いてみたがみんなダンマリをきめこんでいる様子 まー、はじめてだから一言目を発するのはいやだよな わかった、了解! ならば、僕が 入って行って みんなタメ口やってないじゃん ハイハイ、そこの中村さん僕のことをリーダーじゃなくて石田君て呼んでいいからさ は、ハイ(消え入るような声) ハイじゃなくてさ わかった〜石ポン だろ 笑 ま、初めからは無理か じゃあ、ちゃん付けでどおだ? みんな、ちゃん付け 僕は石田だからイシちゃん 小川君はオガちゃん 高橋さんはタカちゃん 中村さんはナカちゃん みたいな感じでさ はい、決まり〜 お客さんがいるような場所じゃないし、僕たちだけなんだからさ仲良くなれば作業もスムーズにいくってもんだろ 半ば強制的にやり始めたけど1ヶ月くらい経った頃にはなんとなく、みんなちゃん付けが出来ていた あの、無口で笑わないナカちゃんも笑顔が見られるようになってきて嬉しいなと思っていた 1年くらい経った頃、バイト終わりにナカちゃんが近くのファミレスで、お茶しないかと言って来てくれた 暑い日だったから冷たい飲み物が飲みたかったし、何よりもナカちゃんから誘ってくるなんて初めてだったから嬉しかったんだ 2人ともドリンクバーに直行したね 確かはじめの一杯が僕がアイスコーヒーで、ナカちゃんはアイスミルクティーだったよ バイトはどお?とか大学の事とかあっという間に2時間が経っていたよね 帰ろうか?ということになって僕がレジに向かおうとしたら、ナカちゃんがちょっとお手洗いに行くねって言ってむこうに歩いて行った 僕は店を出た所で携帯を確認して待っていた 僕は店に背を向けて待っていたのでナカちゃんがそおっと来たのがわからなかったんだ 急に僕の両方のほほを後ろから冷たいナカちゃんの手が包んだ ひゃっ、冷たい! なに!?ナカちゃん、びっくりしたよ〜 うふふ、だってイシちゃん暑いって言ってたからドリンクバーから氷を2個もらって来ちゃったの ナカちゃんの細い指の手のひらでいたずらっぽく冷やされたぼくの両ほほ 心臓もココロもドキッとしたよ でも平静を装った もう、すっかり日が暮れていた 僕のほほはナカちゃんの手の平が離れてもしばらくひんやりが残っていたよ いや、正直に言うよ 今もまだ残ってる もう、10年も経つのにね あのとき、ナカちゃんの手を握り抱き寄せていたらまだ一緒だったのかな でも、僕は間もなくバイトは辞めて就職するために実家に戻る頃だったからできなかったんだ あのとき、ふざけた感じにしちゃったけど もしかしたら、すごい勇気を出してやってくれたんじゃないの? ナカちゃんは僕のことを好きになってくれてたの? 本当はバイトリーダーだとか言ってたけどナカちゃんの笑顔が大好きでそばにいたかったんだ でも、結局、言えなかった いや、言わなかった ナカちゃんは大学2年だから離れ離れになるのは、わかっていたし バイトで送別会をやってもらったとき、ナカちゃんは一番後ろにいたよね ちょっと涙ぐんでたみたいに見えたけど僕の気のせいだったのかな まぁ、バイトでの付き合いも2年だったからちょっと悲しんでくれただけだったのかも知れないけど その答えはわからない 僕の中では、両想いだったよ 今でも、ほほに触れるとあの細い指のひんやりの冷たい感触を思い出せるよ ナカちゃんはまだ覚えていてくれてるのかな それとも・・・ ナカちゃんは今、しあわせですか?
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!