つま先で歩く冷たい地面

3/4
前へ
/4ページ
次へ
この独特な嫌悪感は 自覚してからというものの さらに加速していった。 フローリングの床に残る自分の体温が嫌で つま先立ちをして歩くようになった、 手で食べる物が食べ進めるまでに 手の熱が移って嫌になる、 そんな毎日を繰り返すうちに ふと、あることに気がついた 私は私から 逃げられない こんなに絶望的で簡単な答えが あっただろうか。 私は、私の嫌いとする体温を持った生き物と 一生付き合わなければいけないことに 人生半ばで気がついてしまった。 ここであえて言わせてもらうが 私は自分を嫌ってはいない 自己肯定感だの自己否定だのを 頻繁に耳にするこの時代 実はそんなに自分を嫌っていないのだと 逆に自覚せざるを得なかった。 ただそこにあったのは なんとも皮肉な自己愛… いやいや自分を大切に出来るのは 良いことだろうと 言い聞かせてるように口に出してみた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加