第一章 悲しみのエンパシー

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【今日、午後四時頃、JRの職員から『不審なキャリーバッグが置いてある』と警察に通報がありました。場所はM駅西口の中央口から三〇〇メートルほど北にある新幹線の高架下駐車場です。現場は一時騒然となりましたが、周辺を封鎖して県警の爆発物処理班がX線などを使って中身を調べたところ、金属片などは確認されず、爆発物でないと断定。すぐに回収されました。しかしキャリーバッグのなかには、爆発物の設計図と爆発物の原料となり得る数種類の化学物質が記されたメモが入っており、警察では爆弾テロの予告の可能性を否定できないとして、キャリーバッグが放置された経緯を慎重に調べています】  午後六時半。テレビから流れてくるのは若い男性アナウンサーが読みあげるローカルニュース。画面に黄色い立入禁止のテープで囲まれた現場が映し出され、防護服を着た機動隊員がキャリーバッグの確認作業を行っていた。
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