第一章 悲しみのエンパシー

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 最近ではスーツケースやダンボール箱が放置されているだけで警察が出動する騒ぎとなり、そのたびにSNSには緊迫した現場の写真や動画がアップされ、拡散される。ついでに意気揚々とした撮影者のコメントも世界中にばらまかれる。  けれどその程度のニュースは珍しいことでもなくなり、インターネットのアーカイブには残っても、世間には三日もすれば忘れられる運命。人の心は移ろいやすく、薄情だ。  先のニュースは三日前の六月三十日の土曜日にM市であった出来事だ。爆発物関連のメモが入っていたということで、かなりの緊迫感があったせいか翌日の地元は大盛りあがりだった。だが三日目である今日は一変。一気に終息に向かっていた。
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