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現場に着くと、焦げくさいにおいとともにゴミ置き場が見えてくる。辺りは粉末消火剤の白い煙が充満していて、それが風に乗って北のほうにゆっくりと流れていた。どうやら火は無事に消されたようだった。
現場には騒ぎを聞きつけた生徒たち、教職員たちが群がっている。
「すみません、通してください!」
めぐるは人混みをなんとかかき分け、騒動の発端となった場所を目指す。やがて白っぽい消火剤の下に黒くすすけたゴミ袋の山が見えた。そして、その前に消火器を持った伊央と、なぜか遠峯がいた。
「大丈夫? 怪我してない? 煙は吸ってないよね?」
伊央のもとに駆け寄っためぐるは怪我はないか、伊央の頬、肩、腕をさすりながら確認していく。
「くすぐったいよ。僕は大丈夫。ちょっと熱かったけど、怪我はしてないよ」
やさしく微笑む伊央に、めぐるはようやく安堵した。けれどよく見ると左手の甲が赤くなっている。
「やだ、やけどしてる。すぐに冷やさなきゃ」
「平気だよ」
「高比良の言う通りだよ、雫石。水道で冷やして保健室で手あてしてもらえって」
遠峯の顔や腕もすすで黒く汚れていた。近くにもうひとつ消火器が置いてあったので、おそらく伊央とふたりで消火作業をしたのだろう。
「遠峯くんも一緒に行くよ。鼻の頭が赤くなってる。髪も縮れてるよ」
ゴミ袋の山は三分の一ほどが焼けていた。残骸を見る限り、ふたりとも軽症なのが奇跡なくらいだ。
遠峯は顔や髪を触りながら、「マジかよ」とつぶやく。消火作業に夢中になりすぎて、自身もやけどをしていることに気がついていなかった。
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