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伊央と遠峯は水道でやけどを負ったところを冷やし、すぐさま保健室へ。ふたりでベッドに腰かけ、順番に手あてを受けた。そこへ、勤続二十年の養護教諭である芹沢真紀子から知らせを受けた筧が保健室に駆け込んできた。
「雫石、遠峯、大丈夫か!? 病院は!? 救急車は呼ばなくていいのか!?」
「筧先生、声でかすぎ。俺も雫石もたいしたことないから心配しなくていいよ」
遠峯が笑いながら答えた。
「安心してください。幸い、ふたりとも軽いやけどなので痕が残ることもないと思います」
筧を振り向いた芹沢が朗らかに補足する。
筧は胸を撫でおろす。だが、それで終わりというわけにもいかない。
「ところでなんで火災現場にいたんだ?」
「俺は北棟にいて、ゴミ置き場で煙があがっているのを見たんだ。焦げたにおいもしてきたから、これはまずいと思って、近くにあった消火器を持って駆けつけたんだよ。そしたら雫石が消火器で火を消すところだった」
「どうして北棟にいたんだ?」
「今日の授業のときに理科室にノートを忘れたんだよ。準備室にいた先生に頼んで鍵を開けてもらってノートは見つかったんだけど……。火事のどさくさでなくした」
ノートのことは頭からすっかり欠如していた。遠峯は言いながらそのことを思い出し、ひどく落胆した。
「雫石は?」
筧がたずねるが、伊央は答えない。
「また、だんまりか」
「筧先生は、どうせ僕が放火したって思ってるんだろう?」
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