第三章 傷だらけのロンリネス

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 伊央と遠峯は水道でやけどを負ったところを冷やし、すぐさま保健室へ。ふたりでベッドに腰かけ、順番に手あてを受けた。そこへ、勤続二十年の養護教諭である芹沢(せりざわ)真紀子(まきこ)から知らせを受けた筧が保健室に駆け込んできた。 「雫石、遠峯、大丈夫か!? 病院は!? 救急車は呼ばなくていいのか!?」 「筧先生、声でかすぎ。俺も雫石もたいしたことないから心配しなくていいよ」  遠峯が笑いながら答えた。 「安心してください。幸い、ふたりとも軽いやけどなので痕が残ることもないと思います」  筧を振り向いた芹沢が朗らかに補足する。  筧は胸を撫でおろす。だが、それで終わりというわけにもいかない。 「ところでなんで火災現場にいたんだ?」 「俺は北棟にいて、ゴミ置き場で煙があがっているのを見たんだ。焦げたにおいもしてきたから、これはまずいと思って、近くにあった消火器を持って駆けつけたんだよ。そしたら雫石が消火器で火を消すところだった」 「どうして北棟にいたんだ?」 「今日の授業のときに理科室にノートを忘れたんだよ。準備室にいた先生に頼んで鍵を開けてもらってノートは見つかったんだけど……。火事のどさくさでなくした」  ノートのことは頭からすっかり欠如していた。遠峯は言いながらそのことを思い出し、ひどく落胆した。 「雫石は?」  筧がたずねるが、伊央は答えない。 「また、だんまりか」 「筧先生は、どうせ僕が放火したって思ってるんだろう?」
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