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首輪についた鎖を掴み、首を絞めるように強く引く。犬はもだえ苦しみだす。それが自分の中に高揚感を与えた。
「お客様に媚びろ。尻尾を振って、忠誠心を見せろ」
と、客の前に引きずって連れていくけれど、何もしようとしない。
「ご主人様の言う事が聞けねぇのか」
綺麗な顔に似つかわしくない乱暴な口調、だが、ゾクゾクする色気がある。
わき腹を蹴飛ばして倒れ込んだ犬を足踏みにすれば、反撃のつもりかガチガチと歯をならし噛みつこうとする。
それを紙一重で避けて頬を殴りつけた。
「ばか犬め」
と、仕置きとばかりに股間を踏みつけた。
この犬は良い身体をしているし、立派なモノを持っている。充分に主を喜ばすことができるだろう。
「くぅ、あ、あぁぁぁ……ッ」
熱っぽい目で客を見つめながら、低くて色気のある鳴き声をあげた。そんな犬に対して客は欲の満ちた目で見つめながら生唾を飲み込む。
そっちの趣味もあったようで、客の表情に小さく舌を打つ。
「その犬を貰おう。金は言い値で」
請求書とリードを客に手渡せば交渉成立。それなのにリキョウはリードを掴んだままだ。
「お客様、大変申し訳ありません。粗末な品をお売りする所でした」
客が何か言おうと口を開きかけるが、笑みを浮かべて黙らせる。
リキョウは美しい。自分の魅力を十分に知ったうえでそうしてみせるのだ。
「お客様、お詫びになるかわかりませんが……、今度、私の調教をご覧になりませんか?」
「本当かいっ! リキョウの調教を見せて貰えるなんて」
すっかり犬よりもリキョウの調教へ心が動いている。うまくいったとほくそ笑む。
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