飼い犬に噛まれる

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 約束の日を決めて客を見送る。そして、大きな図体を蹴飛ばして、その上に跨った。  犬を売るのが仕事だというなのに、何故か彼の駄犬ぶりを見せつけようとしてしまう。まるで売りたくないといわんばかりにだ。  いつもは反抗的な態度をとるのに、今日に限ってエロい声で鳴いた。  こんな犬はいらないと、別の犬を望むように、そう思っていたのに。 「あの客が気に入ったのか?」  と、鞭をユーエンの背中におもいきり打ちつけ、首輪を引っ張る。 「くはっ」 「お前の駄犬ぶりをみせてやろうとしていたのに、そんなにあの客がよかったのか!」  と、その頬を張る。  見栄えの良さから彼を欲しがる客は多い。だが、その度に駄犬ぶりを見せつけてきた。そうやって売らずにきたというのに。 「お前は、私のモノだっ」  ついに本心が声となりでてしまう。  調教師にとって、商売道具に特別な想いなどもってはいけない。それなのに、ユーエンだけは駄目だった。 「主……」  床に這いつくばりながら見上げるユーエンの視線は、挑発的な目をしている。その奥の奥に、欲情に満ちたモノを漂わせて。  その目を見る度に、心がかき乱されて熱に犯されていく。  リキョウの目はいつも冷たい。それなのに今は熱を含んで色っぽかった。  もっとぎらつく目で見るがいい。  髪を鷲掴みし、視線を合わす。するとぬるりとしたモノが首筋に触れた。 「誰が舐めてよいと言った? 待てもできないようだな」  顔の前に掌を向ける。これは待ての合図だ。身体に散々と覚えさせたものなのに、そこに頬を摺り寄せた。
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