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犬と、子犬と、楽しい生活
二日後。ユーエンが制する馬車に乗り、向かう先はシアとシユの飼い主であるアンデ家の館へと向かう。
昨日、ユーエンを使いにやったが、相手からの返事はすぐに届き、会うこととなった。
出迎えたのは息子である、ベルノルトだった。数回、パーティで見かけたことがある。いつ見ても醜い男だ。
その容姿もさることながらその中身も相当なもので、それが更にこの男を醜くする。
リキョウを舐めるように見つめたベルノルトは、口元に笑みを浮かべて館の中へと招きいれる。
その後ろにはシユとシア。そして仮面で顔を隠したユーエンが続く。
美しいリキョウには笑みを浮かべていた男も、シアを見た瞬間、その表情をかえる。
余程にシアにされた事にはらわたが煮えくり返っているのだろう。
「お前等……、よく無事で帰って来たなぁ」
その声は怒りに震え、今にも手を出しそうな雰囲気である。
「色々とあるようですが、それは後に」
と、きつくむすばれた拳にリキョウは手を重ねる。
白くきれいな手が意味ありげにベルノルトの手を撫でれば、いやらしい男はそちらに気をとられたようで、にやりと笑みを浮かべる。
「……失礼、そうですな。シア、後で覚えていろ」
その視線に縮みあがりそうな子犬たちの隣。ユーエンが身動きすることなく立っている。
「ほう、闘犬ですかな?」
「はい。ボディーガードとしては役に立つのですが、如何せん顔が醜く、連れて歩くにも顔を晒しているだけで迷惑なので仮面で顔を隠しているのですよ」
と妖艶に微笑む。その美しい容貌に見惚れながらベルノルトがなるほどと頷いた。
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