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「で、結局俺とお前はなにが違うんだ? 寿命以外で」
「体の構造が少し違う。夜暗い中でも目が見えるし、遠くの音が聞こえる。君の体重の倍くらいまでなら片手で持ち上げることができる」
「それだけか?」
「分かり易く言うとそんなもんかな」
「それでなんで一緒に居られなくなるんだ? なにか問題があるのか?」
ジェレミーはカップの残りを全て飲み干した。最後の一口は底に溜まった溶けきらない砂糖のせいで一段と甘い。
「なんでって、僕が気持ち悪くないのか?」
「お前が言った違いなんて俺からすれば紅茶に砂糖を入れるか入れないかくらいの違いしかない。 お前は俺が砂糖をたくさん入れることを気持ち悪いと思うか? それで一緒に居られなくなると思うか?」
ガリューは静かに首を振った。
「僕はここに来て家族を失ってから初めて一緒に暮らしたのが君だったんだけど、なんていうか、それが君でよかったよ」
「よくそんなセリフを恥ずかしげもなく言えるな」
ジェレミーの方が赤面してしまいそうになる。「それはそうと」とそれを隠すように話題を変えようとした。
「例の青色もお前の手品の類なのか?」
ガリューはなぜだか楽しそうに人差し指を振った。
「それは違うよ、ジェレミー君。もちろん僕が元々いたところの技術を持ってすればどんな色だって簡単に作ることが可能だ。だがこの星ではまだその域に達していない。だから僕は代用品を使っているわけだが、こればっかりは君に教えることはできない」
「それを知ったら俺がここを去ってしまうからか? そんなことないから安心しろ。俺は可能な限りお前と一緒にいる」
「よくそんなセリフを恥ずかしげもなく言えるね」
今度は赤面を隠すことができなかった。狼狽えながら陳腐な言い訳を繰り出す姿に、ガリューは椅子から転げ落ちそうになる。
「からかって悪かったよ。君の反応が面白いからついやってしまうんだ」
「それについては謝る必要はない。お互い様だからな」
なんのことか分からず怪訝そうにするガリューを鏡の前に誘導する。寝ている間に額や頬に描かれた落書きを見て彼はなぜか嬉しそうに口角を上げた。思っていたのと違う反応にジェレミーが腑に落ちないでいると、ガリューは鏡をジェレミーに向けた。
「それこそお互い様だ。似た者同士だね、僕たちは」
鏡に映った顔にはガリューに描いた倍の落書きがされていた。
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