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けして零にはならないセカイ
週に一度の社内進行会議。いつも通り印刷されたスケジュール表を見た僕はひっくり返ることになった。
「せ、先輩これ!これ!」
入社当時からお世話になっている――僕のお世話係だったと言っても過言ではない、井口先輩は。きっとそんな反応も予想通りだったのだろう。ニヤリ、と笑って告げたのだ。
「おめでとよ。タツマキナインの最終話、制作担当はお前だ」
僕はあっけに取られて、何度も表と、目の前の先輩のもっさり髭が生えた顔を交互に見比べることになったのだった。
マツオカアニメーション、そこで長らく制作しているアニメシリーズ『タツマキナイン』。そのサードシーズンの最終話の“担当”名に記されているのは長岡昂輝。言うまでもない、僕の名前である。
この制作会社に入って約二年、まだ一度もひとりでアニメを担当したことがない、先輩の補佐しかやったことのない僕が、だ。よりにもよって、このスタジオで現在作っている中でも一番長期に渡り続いている目玉アニメの制作進行を任せて貰えることになるだなんて。
嬉しい反面、プレッシャーもハンパなかった。なんといっても僕は、この“タツマキナイン”の仕事に関わりたくて、このスタジオの求人に応募したのだから。
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