森の住人と日常

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陽の光に翳した刃物は陽炎のように揺らめく。 冷たく光る刀身としっかりとした重厚な背は、精妙さと優雅な見た目を持ちながら、鋭い切り口と最大な強度を持つのが解るの。 ククリナイフを持ち感心する私を、ドワーフ族族長のドリドフ様は満足気に腕を組んでいた。 「ドワーフ族が作りだす武器にはどの種族も敵わない。と言われる理由が良く解りますわ。力と美の調和がこれ程よいバランスなものは初めて拝見しましてよ。」 「我々は鉱物の目利きが特殊なのです。」 狐人族の里を去り、ドワーフ族の里まで訪れた私は、約束してたククリナイフを見せて頂いたの。 「素晴らしいですわ。こちらのククリナイフ…本当に頂いてよろしいの?こちら…素材が特殊鉱石では?」 「良い。そちらは、貴女の為に作り直したヤツだ。使ってくれ。特殊鉱石は、ダンジョン深層に腐るほどある。だから大丈夫だ。」 大きな身体を使い、大丈夫だと大きく頷くドリドフさまに私はニッコリ笑ったの。 「有り難く頂戴致しますわ。時に、カガリが良くこちらにお邪魔してるとか?なにかご迷惑をお掛けしておりませんか?」 「全く、同じ技工師だから話が合う。人族とこんな風に話せるとは思わなんだ。」 「ご迷惑をお掛けしてなければ良いのです。カガリは魔導技工師として一流ですから、ドワーフ族の技術に興味があるのでしょう。」 「誠に、誠に、小気味いい青年である。我々の事を見た目で嫌う人族は多い。しかし、彼は初めから目を輝かせ、我々の工場を楽しんでいた。だから幾らでも来いと伝えてある。」 楽しそうに嬉しそうに話すドリドフさま。良い関係を築いてるのが解り、私も嬉しくなった。 にしても……。ただの魔導技工馬鹿だと思ってたけど、気が合う人には、小気味いい青年なんだ…カガリ。ごめんよ…暑苦しいなんて思って。 「ならばこれからもカガリをよろしくお願い申し上げます。わたくしも偶にお伺い致しますね。」 「あぁ。今度は魔導銃を用意しておくよ。姫さまは、魔導銃使いだとカガリが言った。銃の使い方が上手いとか。」 「えぇ。わたくしの武器は魔導銃とゆうか…魔銃ですわ。」 「あぁ。なるほど。ではゴブニュの武器製造を使用して作ろう。それであれば、魔導銃は魔銃として使えよう。」 「ゴブニュの武器製造…。神々の技師?」 「左様。まぁ、ご本人では無いがね。ご本人は神だしな。我々の秘術である。」 うむむ。ドワーフ族さんはこちらに心を許すとなんでも打ち明けるのね…。ちょっと心配だわ。 「ドリドフさま。秘術は秘密だから秘術なのです。わたくしやカガリでも教えては成りませんよ。……人族には馬鹿な奴汚い奴は腐る程いるのです。だから秘術は秘匿して下さい。」 大きな身体を見上げ真剣にお伝えする。 ドリドフさまは、ふよふよと口元を緩ませ、うんうん。と何度か頷くと、私の頭をそぉ〜と撫でたのよ。 うん……。ちびっ子が頑張って言ってるって感じなんだよね。きっと。 カガリに口酸っぱく言い聞かせよう。その方が良いわ。 内心で色々考えながら、私はドワーフ族の里を後にした。 「にしても…この森そんなにダンジョンいっぱいあるの?」 お家に向かって歩いてる時に、ナスカを見上げてつい疑問を問いかけたの。 「私達が発見しただけでも30基はありますね。低層ダンジョンから深い深層ダンジョンまで。豊富な上に、人族が入った形跡がまるで無い。珍しいですよ。」 「ザックの離島のダンジョンもでしょ?」 「あぁ。彼処は離れ島ですし、納得いくんですけどね。こちらは大陸にあり、ヴィヴィさまが住み着くまでは野放しだった場所です。しかも廃ダンジョンが無いのも珍しい。今のところ、我々が探索したダンジョンのダンジョンコアは全て発見しましたから、保護符を掛けときました。ダンジョンコアがあれば、ダンジョンは生きてますから、色々便利ですしね。」 「ふ〜ん。ねぇ。なんでこの森は、そこまで色々あるのか調べれる?」 「難しいですね……。直ぐ側に地龍が巣を作ってますもん。」 「地龍…ね。そういえばさ…ずっと気になってたんだけど。龍族と龍人って違いあるの?」 「厳密にいえば御座いませんよ。人により呼び方が違います。我々ドリスタ帝国の警務・軍務等は、人化する者を龍人。龍・竜に連なる全てを龍族・竜族と呼びますね。」 「ならさ…………。」 私は普段から気になってた細かな事をナスカに聞き、ナスカは細かく砕いて説明をしてくる。 今日の護衛はナスカのみ。 リリーはギルドに出張中。アビはカガリと共に調査へと、カイトはポンさまとなんか作ってる。 久しぶりに二人きりだから、手を繋いでお家に向かって森を降りていったのよ。
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