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忍びよる混沌の闇
「結局の所なにもわからないと?」
ポンさまを交えた夕食の後、談話室にて私はスタンの報告書を受け取り報告を受けていた。
「えぇ。恐らくメルーシャー大サーカス団の者達は、記憶操作されております。」
「それの魔証紋が…プジャールの物と?」
「はい。」
「プジャール……ね……。あそこは神聖国でしょ?国王はシュグブル=アリ=プジャール。まだ若い20歳の国王。後継人は…ノスリー教皇。プジャール神聖国の国教であるシバァ神を崇めるシバァ教の最高位の神官。我が国と特に関わりはなく…宗教は全く違う。何故…。」
前世の記憶を浚う。プジャールが関わった大きな出来事を……。ないわ……。ないのよ。私が覚えてる限りでは。
あぁ…でも……国王の妹がもうすぐ留学してくるわ…。意味があるのかしら?
「ガイノス殿下にも同じ内容をご報告致しました。」
「そう。……記憶操作されてたのは団員全て?」
「団員とメルシャー大サーカス団と関わりのあった業者全てです。」
「そう……ならば頼まれてくれる?もうすぐ国王の妹が留学してくるわ。その護衛及び監視に我が目と耳を。」
「畏まりました。」
「あと……。メルーシャー大サーカス団の取り引き業者に水運業者はいる?」
「……いえ。リストには居ません。」
「なれば探して。いない訳ないわ。かのサーカス団の人気演目は、ウィンデーネの舞でしょう?聖なる水が必要。水を持ってくる者がいるはずよ。」
「畏まりました。ご報告は?」
「叔父上に。」
「畏まりました。では失礼します。」
「えぇ。気をつけて。」
転移で去ったスタンを見送り報告書をもう一度読み込むの。
……繋がらない……全てが。
気持ち悪いわ。なんなのこの事件。
サーカス団の公演の始まりは我が国の皇都から…様々な主要都市を廻り、約3年ぶりに我が国に凱旋帰国した。
サーカス団のテントに描かれた魔法陣を書いた南方辺境領出身者の絵師は自殺。
書き足されていた火の精霊を呼び出す魔法陣は絵師の手のものでは無い。
テント内の魔術トラップを仕掛けたユーラシアの業者は倒産。しかも莫大な借金により??
こちらも書き足された召喚魔法陣の術者は不明。
宣伝呼び込み業者は不明。
飛竜の舞で必要不可欠な竜使いが火災により死亡……。飛竜に乗れるのに??
現れた魔術師の痕跡は無い。
死亡した者達の他に行方不明者がおり年齢性別バラバラ。
それに…漆黒の魔術師を拘束し消滅したのが御母様…??
「確かに…わけがわからないわね。」
ゾワリと寒気が背中を走る。まるで辺り一面に墨汁が染み渡る闇が広がるような、得体の知れない敵が私達を見下ろし嘲笑ってる気がしたの。
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