バルト山脈の麓

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「姫さまぁ紹介します!!」 満面の笑みでアビは男性達に手を向ける。 「右回りにお伝えします!!本名は私知らないので通名で!! まず警務部特殊強行派出身ブラッド。」 背が高く良く日焼けし坊主頭の厳つい男性は、小さく頷く。 「次に警務部特務隊出身バース。」 同じく背が高いスラリとした怜悧な男性は、ヒラヒラと手を振った。 「次に警務部警務科出身キース。」 中肉中背の穏やかそうな男性は、綺麗なお辞儀をした。 「次に軍部第一師団第一大隊第一特殊部隊出身オータム。」 スタイル抜群の背が高い。真っ黒な衣装を身に纏い目しか出してない男性??はペコリと頭を下げた。 「叔父上の部隊じゃない…。」 驚いて口に出ちゃったわ…。 「えぇ。マリー様…マリーアンナ様の目・耳・足・手は、何処にでも入ってますよ。」 そっと私に耳打ちしたのはリリーだった。 「次は軍部強行突入部隊出身トイ・ケイ。以上6名です!!」 奇抜な真っ赤な髪のトイ。真っ青な髪のケイ。 若干小柄な二人は、随分とゴツゴツした服装をしていた。 「ブラット・バース・キース・オータム・トイ・ケイ。どうぞよろしくね。 では、早速コレ読んでくれる??移動しながら、貴方方にして欲しい事を伝えるわ。後少し質問をしたいわ…。よろしくて?」 「「「「「「「御意」」」」」」」 用意しといた小さな魔導板通信機に必要な情報をトレースさせて6人に渡す。 6人が確認してるのを横目に、馬車の中へ向かった。15人は乗れそうな大型馬車。 うん…この空気が締まる感じ良い!!! 流石軍部・警務部!!出身者! 私の両横にはアビ・ナスカが腰掛けて、ナスカの隣にカイト、アビの隣最奥はリリー。 向かい側には6名が腰掛けた。カガリが御者をするみたい。 全員が腰掛けてから、馬車が静かに進み出した。おや?振動が少ないわ…。なんなあるわね!コレ!!振動の少なさに感動しつつ…前に座る6人を見つめるの。そろそろ良いかしら?? 「読み終わったかしら??」 私が声掛けると6人は一つ頷く。 「わたくし、お伺いしたいの…まずは警務部の方。我が国の警務部は、、警備・犯罪抑止・犯罪者確保・犯罪捜査・生活指導・取り締まり・パトロールがお仕事よね?」 「はい。警務科の仕事は、地域の治安を維持する・守る事が中心です。」 私の質問に答えたのは警務科出身のキースだ。 「解ったわ。では…現状で警務部警務科のお仕事を、しっかりと勤めてる。と言える者はどのくらいなの?又は、法令の上で不備な箇所は?」 「警務部警務科は、各領各地区で管理官が居ります。帝国法に基づき全体を管理・運営しております。……ですが…その警務部警務科を監視・監査する機関自体が、警務部警務科に御座いますので…やはり穴があるかと…。その為…どうしても職務に忠実と言えない者が出て参ります。 特に…辺境領辺鄙区は、癒着・隠蔽・巨悪犯罪が起きやすいかと…。」 「そう…やはり改善には監視・監査が必要なのね…。解ったわ。ありがとう。 では軍部に、密輸・テロ組織・巨悪犯罪、要は我が国の安全保障上の犯罪を潰し、他国の侵略に対し防衛をする事が、我が国を守る事がお仕事よね?なにか法令上で問題は?」 私の質問に答えたのは…意外な事に、黒ずくめの叔父上の部隊出身オータムだった。 「我が国の軍務省軍部は、警務部と同等に帝国法に基づいて全体を管理・運営しております。 また、交戦権を有する存在で、責任ある指揮者の指揮のもとに、遠方から識別しうる標識を有し、公然と武器を携行し、戦争法規を遵守するもの。を示します。 要するに、我が国を全ての敵から御守りする事ですね。 軍部は6つの師団から成り立っております。また、師団によっては、上級貴族・有権者の次男以下のご子息が勤められている所も御座います。 やはり色々と便宜を図る事も御座いますね。 それでなくても、軍部は大世帯の為、やはり違反を犯す者は居ります。 我々も監視・監査は、軍部内でなので隠蔽・癒着は起きて居ります。」 「そう…解ったわ。双方とも管理体制に穴があり犯罪の温厚を作りやすいグレーゾーンがあるのね?? では…改めて皆に聞きたい。 バルト山脈の麓の犯罪について、今資料を配り読んでもらったわね? わたくしは、この犯罪組織を潰したい。 貴方々には、その手筈を整えて欲しい。 一気に潰すには、どう準備をするべき? けれど…害虫一つ潰そうが、直ぐ湧くでしょう?? なれば、どう対処するのが妥当なの? 警務部・軍部の業務内の事なのに、ここまで大きな組織を見逃してるのは何故? ………良い??わたくしは、国家組織内の犯罪行為も一緒に潰したいのよ。ここだけでは無いでしょう?我が国の民衆を苦しめる犯罪組織は…。 わたくしが願うのは… 我が国の安全保障の要は、警務部・軍部が最大の護り手であり矛であると広く知らしめる事。 犯罪組織が、それを認識し組織化する心を粉砕し、二度と我が国で行えないと身体に心に染み着かせる事よ。 その為に…見せしめとして…この組織を一人残らず潰し、関わりがある高位貴族・有権者も断罪する。良い??全てを潰すの。二度と這い上がれ無い様に。 ……さぁ…我が国の忠臣達。我が母上の藩屏たる強者達よ。 わたくしが…すべき事…教えてくれる?」 シーン。静まりかえる。静寂の中で、馬車の車輪の回転する音だけが、その場を支配する。 目の前の6人は、皆考え込む様に目を閉じてるの。ナスカ・アビ達も思案してるのか腕を組んで…。 …口を開いたのはやはりオータムだ。 「…姫さま。 まずは、現状確認・組織規模・被害状況・犯罪捜査を致し情報の正確さを確認する事が必要です。 この規模の組織犯罪を何故見逃してるか?と姫さまは仰っしゃいました。 そこをまず精査せねばならぬでしょう。 ただわたくしの経験から申しまして…恐らく、地元有権者・裏市場有権者・軍部・警務部・貴族の関与は間違いないかと…。 そうなると、関与してる階級職の者が、高位であれば、崇高たる誇りを持つ警務部・軍部の者でも、目を瞑り不甲斐ないと思ってもどうしようも出来ないでしょう。我々の上・下間規律は厳しいのです。 我々には、逮捕・捕縛権が現在ございません。あくまで個人マリアンヌ様の護衛隊ですので。そこはどうなさりますか?」 ウフフ…舐めて貰っては困る。ゆっくり口角が弧を描くの。今きっと私は黒い・真っ黒な笑顔を浮かべてるわ。 「リリー。」 「ハイ!「皇女殿下専属特殊特別部隊・黒狼隊」の貴方々には、その任務の特殊性の為… 「マリアンヌ皇女殿下」の安寧が著しく脅かされる事情、又はその傾向・危険を事前に察知した場合…全ての危険を遠ざけ・犯罪を取り締まり・捕縛・逮捕・排除権を有する。 これは、上皇后陛下・軍務省・国務省・法務省の許可証です。必ず持ち歩き、我が主を御守り下さいな。」 ニッコリ笑いかけてリリーは、許可証を6人に渡した。ふふふ。リリーは優秀なのよ。 「…わたくしの安寧が脅かされてますわ。 さぁ…貴方達は、どう対処する? 無論、我が名は秘匿して欲しい。だが、状況により出しても構わない。なんせ黒狼隊貴方達の所属部署は帝国民の認知度が高い。 貴方達に任務は与えた。貴方達の任務を、遂行する為に、必要な支援を…わたくしが知りたいのはそこですよ?」 「姫さま、充分だよ!!後は我々の仕事!!地元軍部・警務部との繋ぎは、私アビゲイル・カイトが付けてる。 お任せ下さい!! 姫さまは、バルト山脈の麓の視察を恙無く…その間に、情報精査を行わせます!! 多分蛆虫が寄って来ますから…それは都度、プチプチしましょう? って!!いったぁい!!!なんで殴るの?!」 もう我慢出来なくなったの…アビ…。 リリーも、そんな力一杯殴らなくても…。 涙目じゃない…アビ。 「たしかに…許可があるなら我々にお任せ下さい。必ず満足頂ける結果をお出し致します。」 おや?スルー…。オータムさん淡々としてるわね!!良いと思う!! 「分かった。任せるわ。よろしくね。」
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